2012年12月17日

巡りあわせ


今日はいろんな偶然があった。

もともとレクチャーを聴きに行く予定だったのだけど、その前に吉祥寺でお昼ごはんを食べに行くことにした。

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目指していたごはん屋さんはちょっとややこしいところにあるらしく、駅から高架沿いをけっこう歩いた。と、ふと「ダンケ」という喫茶店が目に入った。看板に「バターブレンド」って書いてある。なんか見覚えある、と思ったら、心斎橋にあるバターブレンドコーヒー「ダンケ」と同じ店みたいだった。

心斎橋のお店はずっと前に友達に連れていってもらったことがあって、もともとは神戸のお店らしく、そこで食べたチーズケーキとコーヒーの相性が最高だったのでよく覚えている。聞いたら、そこで出しているコーヒーに合わせて作ってもらっているいるケーキなのだそう。白いチーズケーキが真っ赤なお皿に乗って出てきたのも記憶に残っている。

それから、注文したコーヒーとケーキが来て、テーブルの上に伝票が置かれたとき、そこにこんな言葉が書かれていてとても綺麗だと思ったんだ。

いつの日か
この珈琲の香りが
記憶の糸口とならんことを
たとえほろ苦くとも
生きた証として

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やっとのことでごはん屋さんにたどり着くと、どうやら同じ系列のお料理教室に行ってしまったようで。
引き返して無事お昼を食べられたのだけど、だいぶ遅くなってしまったので予定を変更してお散歩することにした。

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ふらふらっと井の頭公園まで来ると、雑貨やら手芸やら手作りのものを売っているお店がいくつか出ていた。
前にも井の頭公園に出ていたお店でピアスとネックレスを買ったことがあって、偶然にも今日、その時に買ったピアスをしていた。そんなことを思い出しながら池の周りをぐるぐる歩いていると、前買ったお店を発見!わぁ、と思ってお姉さんにピアスを見せた。

お姉さんは「里子に出した子に再会したみたい!」と喜んでくれた。「その子、どんな服とも合わせやすいでしょう?」って。

で、今日も一組ピアスを買った。

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またしばらく歩いて、吉祥寺の商店街まで来た。アーケードに並ぶいろんな店を見ながら歩いていると、突然思い出した。10年ほど前に大学受験で東京へ来た時に、このあたりのレストランで食べたラザニアがめちゃくちゃ美味しかったんだ。

母が受験についてきてくれて、吉祥寺の近くに親戚がいたのでたまたま吉祥寺に寄ったのだと思う。階段で二階に上がっていくような入口で、レストランの名前はジャルダン(実際には「ダルジャン」だった^^;)。フライパンの上に乗って出てきたラザニアの中に薄く切ったリンゴが入っていて、お肉とトマトに混じって甘いリンゴの味がするのがとても新鮮だった。昔からあるお店、という感じの雰囲気のよいレストランではあったけど、流行っているのかどうかも分からない、何しろ私たちはたまたま東京に出てきて、その時腹ごしらえをするだけだったので、「わぁ美味しいな」とは思ったけどもう二度と来ることはないだろうと思っていた。でもアーケードを進むにつれ、その記憶がこの辺のどこかだっていう感覚がみるみる確信に変わってきて。

お店は案外あっさり見つかった。アーケードの入り口付近、やっぱり階段で二階に上がっていくようになっていた。
わぁ~って懐かしさがこみあげた。東京へ引っ越してきて吉祥寺は何度か来たのに、どうしてこの場所に今までたどりつかなかったんだろう。

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で、またしばらく歩くと、ふいにgentenの直営店を発見。

5年前、働き始めて初めて自分に買った鞄がgentenのものだった。すっごくシンプルなやつなんだけど使うほどに馴染んできて、とっても気に入っている鞄。でもクリームが無くなってからちょっとお手入れをさぼってしまっていて、「お店に持っていかなきゃ…」と思いながら何ヶ月も経っていた。その店が突然現れたのでびっくりしてしまって。それに、私は今日その鞄を持ってきていたのだ。

お手入れをしてもらって、クリームもちゃんと買って帰った。

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お昼ごはんのお店へ行くのに道を間違えていなかったら、コーヒー屋のことは思い出さなかったかもしれない。
予定を変更せずにレクチャーを聴きに行っていたら、井の頭公園にも行かなかったし、ピアスのお姉さんに会っていなかったかもしれない。
アーケードを通らなければ、ラザニアのことを思い出さなかっただろうし、革の鞄のお手入れもできなかったかもしれない。

毎日いろんなものを見て、聞いて、人と話して、その体験はその場では消えていくけれど、何かの拍子にまた自分の前に現れるんだろうな。それは気まぐれに一本違う道路を歩いていたから気付けたような巡りあわせかもしれない。また巡りあったから幸せというものでもないかもしれない。

でも、今日は偶然が重なりすぎて。「たまたまあそこを通ったから思い出した…」というのはあるにしても、今日このピアスとこの鞄で来ていたことを思うと、今朝、家を出る前からこんな贈り物が待っていたのかなぁ、という気がした。

こんなふうに不意に懐かしさに出会う一日もいいな、と思った。